国勢調査でわかることは「日本の現状を知る統計情報」
世帯ごとにわざわざ用紙を配布し回答してもらう国勢調査。データを集計し、統計的な推移を見る。各自治体の情報を集約すれば集計できるであろうデータも中にはありますが、職業であったり世帯の構成であったり、国勢調査ならではの情報もあります。
国勢調査を行うことで、一体どのようなことが分かるのでしょうか?
時間を掛けて回答したものなので、生活にどのように役立っていくのか気になる人も多いでしょう。では、調査することで明らかになる統計情報について、詳しく見ていきましょう。
実際に国勢調査で回答する内容は、次の記事を参考にしてください。
国勢調査でわかる統計情報
国勢調査を行うことで、主に以下の内容が統計的にわかるようになります。
- 日本の人口および人口の増減率の推移
- 市区町村別の人口増減率
- 年齢 3 区分別人口の推移
- 一般世帯の家族類型別割合の推移
- 産業 (大分類) 別 15 歳以上就業者の割合
ここで紹介するのは大まかな情報です。もっと細かいレベルでの統計を取ることで、行政の施策などに活かせるようになります。
日本の人口および人口の増減率の推移
少子高齢化が進み、平成 17 年より人口が横ばいとなっています。本来三角形に形成される人口ピラミッドも、1947 年から1949 年の第一次ベビーブームと、1971 年から 1974 年の第二次ベビーブームに生まれた世代が最も多く、ピラミッドではなく壺型の形状になっています。
2010年から2015年にかけては人口が約96万人減少しました。これは大正9年に始まった国勢調査から初めての人口減少です。つまり生まれてくる赤ちゃんよりも、亡くなる人のほうが多いということ。今後もしばらくは、この傾向が続くのではないかと推測されます。
医療の進歩により寿命も伸びていますが、逆を考えれば新生児の死亡率も減少しています。少子高齢化は多くの先進国が抱える問題であるため、一朝一夕に出口を見つけられないのがとてももどかしいですね。
市区町村別の人口増減率
地方の過疎化の状況も明らかになります。人口が横ばいで、都心部に出てくる人が多くなれば、当然の状況であります。交通の便の悪い山岳部は大幅な減少傾向にあり、東京、横浜、名古屋、大阪、福岡といった大都市は増加傾向にあります。
全国の8割の市区町村で減少傾向にあり、特に山間部で 10% 以上の減少が見られました。その反面、東京都や埼玉県、愛知県といった都市部において増加している結果が得られています。
年齢 3 区分別人口の推移
年齢の 3 区分とは、以下の年齢帯に別れます。
- 0 ~ 14 歳
- 15 ~ 64 歳
- 65 歳以上
安直に少子高齢化と言っても、具体的に数値として明らかにしないと対策を練ることもできません。2015 年の調査結果には、第一次ベビーブームの世代が完全に 65 歳以上として集計されることになり、1995 年以降に 0 ~ 14 歳の人口を超えた 65 歳以上の世代の幅が、また更に拡大している状況です。
2015年の国勢調査の結果によると、65歳以上が全体の約 27% ほどの結果になりました。
一般世帯の家族類型別割合の推移
統計的には「普通世帯」と会社や学生の寮で生活している単身者の「準世帯」に別れます。また、普通世帯と言っても次のように分類されます。
- 単独世帯 (独り暮らしの世帯)
- 非親族世帯 (同棲や友達同士の同居世帯)
- 核家族世帯 (親と子で生活している世帯)
- 核家族以外の親族世帯 (核家族に加え兄弟や親等の別の親族が同居している世帯)
この中で一番多いのは、全体の約三割を締める「単独世帯」となります。高齢化により単身で生活している高齢者も増えています。高齢者が孤立してしまうことは、社会的に大きな問題です。孤独であることの不安、迫る病に対する不安、等。不安を除くコミュニティ形成の必要性は十二分に理解はしていても、大正解と言える答えを探し続けているのが現実ではないでしょうか。
国や自治体がどうにかしてくれる問題でもないので、各人が現実と向き合って名案をはじき出さなくてはいけないのだと思います。
産業 (大分類) 別 15 歳以上就業者の割合
2019 年現在、日本の産業区分のうち大分類は以下の 20 の項目に分かれています。
日本標準産業分類 (大分類) |
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A 農業、林業 |
B 漁業 |
C 鉱業、採石業、砂利採取業 |
D 建設業 |
E 製造業 |
F 電気・ガス・熱供給・水道業 |
G 情報通信業 |
H 運輸業、郵便業 |
I 卸売業、小売業 |
J 金融業、保険業 |
K 不動産業、物品賃貸業 |
L 学術研究、専門・技術サービス業 |
M 宿泊業、飲食サービス業 |
N 生活関連サービス業、娯楽業 |
O 教育、学習支援業 |
P 医療、福祉 |
Q 複合サービス事業 |
R サービス業(他に分類されないもの) |
S 公務 (他に分類されるものを除く) |
T 分類不能の産業 |
農業や林業、そして建設業は減少傾向にあります。働き手の減少に伴う影響が最も大きく、都心部の人口推移が増えている影響もあり、農作物に関しては輸入品に頼らざるを得ない食物事情であるのはご存知かと思います。建設業の場合、労働環境や賃金形態の良いサービス業等に若者が流れる傾向にあり、若年層の世代が育たない点が問題になっています。
僕の周りにも建設業に携わる知人が多くいますが、40代前後より下の世代で建設業を職にしている割合は少ないと実感しています。その一方で外国人技術労働者が増えている領域でもあります。
またネット社会の発展により、卸売業や小売業も減少しつつあります。これは社会の傾向に伴う需要が減少したことによります。利便性があがれば無くなる仕事もある。それが最も顕著に出ている業種ではないでしょうか。
まとめ
このように調査一つとってみても、様々な傾向が明るみになるのが国勢調査であります。単に数字だけ集めてなるほどと頷いているだけでは社会が悪化する一方です。個々人における影響は小さいものかもしれませんが、統計として集約することで大きな問題として浮き上がってきます。集計結果は単に評論家が議論するための材料ではありません。
日本の将来を考えるといった大義は無くとも、自身の家庭/家族について考えることも将来につながる第一歩となります。単に国勢調査の用紙が届いたから記載通りに回答するだけでなく、ちょうどいいタイミングなので、一瞬でもいいので日本の現状について個人で向き合ってみてはいかがでしょうか。
過去の国勢調査結果は閲覧可能
最後に、総務省統計局のホームページで、これまでの国勢調査の結果を見ることができます。なんと、大正 9年に実施された第 1 回国勢調査のデータも閲覧することができます。当時は日本の人口は 5,600万人程度だったようですね。