大人が楽しめるヨシタケ シンスケの衝撃絵本「もうぬげない」
とにかく洋服が脱げない子供を題材にした絵本「もう ぬげない」が話題になっています。
タイトル通りの絵本なのですが、あらすじは服を脱げなくなった少年が自分で脱ごうと試みるもまったく脱げず、このままでも人生どうにかなると妄想を描く話となっています。子供の日常生活の断面を切り取った内容ですが、このまま脱げなかったらどうなってしまうのか、子供の視点ながらに面白おかしく表現されています。
幼児にとっては「あるある」ですが・・・
ただ洋服が脱げない、親からすれば子供が表紙のような格好でウロウロしていたら思わず笑ってしまいますが、子供にとっては一大事です。幼稚園や保育園に通っている幼児にはよくある出来事でありますが、大抵の子供はどうにも出来なくなって泣くか、その前に親が気付いて脱がしますよね。
前向きな少年の物語
でもこの少年は、開き直ってしまうのです。
ふくがぬげなきゃ ぬがなきゃいいんだ!かんたんなことじゃないか!
ここから少年の妄想タイムスタートです。日常生活だって困らない、友達とも仲良くなれる、このまま大人になったら・・・と、妄想は膨らむ一方です。しかし、このままの格好で生きようと決心した少年に大ピンチがおとずれます。
もう おしまいだ・・・
はてして少年は洋服を脱ぐことができたのでしょうか。
子供向け?大人向け?
「もう ぬげない」は絵本でありながらも、幼児には伝わりにくい話かもしれません。服が脱げなくなって怖い思いをした子は、きっと嫌な本と思うでしょう。誰の手も借りず服を脱げるようになる小学生以降であれば、初めからこの本を読んで面白いと感じ、大爆笑すること間違いなしでしょう。
この本は大人が読んでも、笑いのツボを大いに刺激します。むしろ、主人公の少年くらいの子供がいる家庭では、親が読むために買ってもいいくらいの本です。日常の子供の摩訶不思議な言動に笑ってしまう、そんな一面を切り取った絵本です。
最期のオチが分かっていながらも、何度読んでも楽しいと思える絵本はなかなかありません。早く次のページを見たいと大人が思ってしまうような魅力があります。
「もう ぬげない」
久し振りに面白い絵本に出会えたような気がします。
ヨシタケ シンスケの絵本
「もう ぬげない」以外にも同著者の作品は、どれもオススメです。以下の二冊は少しだけ中身を読むことができるので、著者がどのようなテイストの絵本を書いているのか、雰囲気をつかむことができると思います。
ふまんがあります
わたしは いま おこっている。
なぜなら、おとはな いろいろと ズルいからだ。ちゃんと もんくを いって、
ズルいのを やめてもらおう。
大人のズルいところに怒り父親に不満をぶつける娘と、子供のためにやっているんだと、大人のズル賢い言い訳で娘に説く父親の会話のやりとりが題材となっています。たくさんの不満をぶつけて、すっきりできるのでしょうか?最後まで目が離せません。
りゆうがあります
ちゃんとした りゆうがあれば
ハナをほじっても いいんじゃないだろうか。
出だしから衝撃的な始まりです。爪をかんだり、ストローでぶくぶくしたり、子供が何気なくやってしまい行儀が悪いと怒られる行動には、ちゃんと理由があると言い訳をする子供の話です。理由があればハナをほじっても良いですよね?でも母親はその理由に納得してくれるでしょうか。
子供の現実離れしたすっ飛んだ答えに思わずニヤけてしまいます。
この本は行儀が悪いことをやってはいけませんと説いている本ではありません。注意しても母親が怒鳴るようなシーンもありません。理由と言いながらウソをついてはいますが、子供の想像力はこんなにもあるから、頭ごなしに怒るのではなく子供の話に耳を傾けて聞いてみることも大切だと、大人に向けて言っているのかもしれませんね。
やっぱり大人が読んでも面白い
「ふまんがあります」と「りゆうがあります」は親子の “言い訳” が題材となっている絵本です。親子で読んで大人も子供も楽しめる本であることは間違いないです。読み終わって大人が笑顔になれる本はなかなかありません。
純粋に「面白かった」と言えるヨシタケ シンスケさんの絵本、ぜひ手にとって読んでみてください。