個人事業主の所得税や消費税を口座振替にするための手続き方法
個人事業主に掛かる税金を口座振替にするには「預貯金口座振替依頼書 兼 納付書送付依頼書」なる書類を、所轄の税務署もしくは振替口座となる金融機関に提出します。
口座振替ができる税金
- 申告所得税 及び 復興特別所得税
- 消費税 及び 地方消費税(個人事業者)
対象は確定申告により確定した税金、および予定納税分(1期・2期)や消費税の中間申告分になります。また、滞納分についても同様に口座振替で対応できます。
口座振替は一部税金の収める期限が延びる
税金の種類によっては、通常の支払い期限と口座振替による振替日が異なります。
税金 | 法定納付期限 | 口座振替日 |
---|---|---|
所得税 | 確定申告の受付最終日 (例年 3月15日あたり) | 4月20日前後 |
消費税 | 3月末前後 | 4月25日前後 |
最終的に納める税金の額は変わりませんが、約1か月後ろ倒しになることで、納税額を準備する余裕ができるといった考え方もできます。なお、振替による手数料は無料です。
口座振替の依頼書を作成する
提出書類のファイルをダウンロード
提出するのは「預貯金口座振替依頼書 兼 納付書送付依頼書」です。用紙は国税局のサイトからダウンロードできます。
複数のダウンロードリンクがあり、パソコンから入力できる PDF ファイル、そして手書き入力用の PDF ファイル、それぞれの入力方法が記載されたファイルが用意されています。
パソコン入力用のファイルは、開業届や青色申告の申請書と同様にダウンロードしたファイルへ直接入力することができます。同時に控えのファイルも作成されるため、パソコンで作成したほうが手間要らずです。
もしパソコンから PDF へ入力する方法がよくわからない方は、こちらのページを参考にしてください。どのアプリを使えばパソコンから入力できるか、詳しく紹介しています。
書類の記述内容は、記載要項のファイルをご覧いただければ分かるようになっていますが、注意点も含め記述方法を説明していきます。
書類を作成する
パソコン用の PDF ファイルを開くと、書面上にごちゃごちゃした情報が書かれていますが、印刷時には出力対象外に設定されているので安心してください。はてなアイコンにマウスを当てるとヒントが出るので、そちらを参考にしていただいても構いません。
以下、パソコン用の PDF ファイルを用いて説明します。手書きの場合であっても、同じように入力してください。
宛先と振替開始日を入力
- 提出先税務署名
管轄する税務署名を記入します。確定申告の提出先となる税務署です。 - 氏名
あなたの名前を入力します。 - 振替対象の税金を選択
所得税や消費税どちらも口座振替にする場合は、何も書かずに提出します。もしどちらかの支払いで口座振替を利用しない場合、印刷後に対象の税目を二重線で消します。 - 口座振替開始日
ここで選択した日付以降に、税金の入金が必要になった際、口座振替が行われるようになります。書類を提出する日付よりも未来の日付を設定しましょう。
ここまでが税務署向けに記述する内容です。続いて金融機関向けの内容を記述します。
口座情報を入力
- 書類提出日
金融機関もしくは税務署に書類を提出する日付を入力します。先程の口座振替開始日よりも過去日付になるようにしましょう。 - 口座振替する金融機関名
ゆうちょ銀行の場合は、店名を入力してはいけません。入力した場合は提出時に訂正させられます。 - 口座の住所
入力した預金口座に登録してある住所・電話番号を入力します。口座に登録している住所と確定申告時に記載した住所が異なる場合は、「申告納税地」の欄に申告書へ記載した住所を入力します。 - 氏名(フリガナ)
パソコンからは氏名のフリガナのみ入力できます。漢字の氏名は印刷後の手書き入力になります。 - 口座番号・記号番号
ゆうちょ銀行とそれ以外の金融機関で入力欄が異なります。ゆうちょ銀行で申請する場合「預金の種類」のプルダウンは空欄を選択しておきます。番号の入力は枠ごとに選択して入力するとエラーになるので、最初の枠を選択したら一気に番号を入力してください。
ゆうちょ銀行利用時の注意点
個人事業主であれば、事業用に当座預金の口座を開設している方もいるでしょう。しかし、ゆうちょ銀行の場合は、当座預金を納税用の振替口座に利用することができません。
パソコンから当座預金の記号番号を入力しようとすると、フォーマットエラーが出てしまいます。ゆうちょ銀行に問い合わせたところ、振替口座を登録することが出来ないと言われてしまいました。ゆうちょ銀行で事業用に作成した当座預金の口座が利用できないのは、残念でなりません。
印刷する
ファイルの右上にある [印刷を行う] のボタンをクリックして印刷してください。印刷はモノクロで問題ありません。
パソコンから印刷した場合、同じ内容が記された控えの用紙も印刷されます。手書きの場合は控えを手書きで入力するか、書いたものをコピーして、書類の右上に [控] を書いておいても大丈夫です。
手書き項目の記述と押印
パソコンから入力した場合、印刷した書面の次の欄を手書き入力、および押印が必要になります。
- 氏名横の押印
- 振替対象の税金を選択があれば、二重線で取り消し(税務署向けと金融機関向けに2箇所同じ項目があるので要注意)
- 金融機関情報の漢字氏名を入力
- 金融機関お届け印の押印
これで提出する書類の完成です。
口座振替の依頼書を提出する
提出先は、税務署もしくは振替依頼書に記載した金融機関になります。
銀行によっては、この書類に関して熟知している行員がおらず、確認の手続きに時間が掛かることもあります。国税局のサイトを確認して提出した書類である旨をきちんと伝えるようにしましょう。
提出時の持ち物
- 作成した依頼書
- 依頼書の控え
- 印鑑
書類に不備が無ければ、そのまま受理されます。もし訂正が必要になると訂正印で対応するので、印鑑は持参したほうが良いです。
振替納税の連絡方法
確定申告により納税額が確定すると、4月に入って国税局から紫の「振替納税のお知らせ」のハガキが届きます。
あとは、このハガキに書かれている振替日までに、納税額を口座へ入金しておけば終了です。
税金を口座振替にする際の注意点
残高不足にならないように必ず確認すること
振替日に口座の残高が不足していると、税金が未納の状態になります。つまり滞納と同じ扱いとなり、この翌日から滞納税が掛かります。滞納発生から2カ月以内であれば 100,000 円あたり 56 円、2カ月以上であれば 176 円ほどが滞納税として追加されます。
滞納すると手続きの手間が掛かるので、絶対に残高不足にならないよう事前に確認しておきましょう。
納税地が移ったら改めて申請が必要
引っ越し等で事業所が変わると、管轄の税務署が変わります。その場合は、改めて依頼書を提出しなくてはいけません。
税金の徴収は税務署毎に行われるので、書類の冒頭にも提出する先の税務署名を記載しています。確定申告を元にそれぞれの税務署が判断するので、管轄の税務署に依頼書を提出していないと口座振替が行われません。
こちらも滞納税が発生するリスクを伴うので、忘れないようにしましょう。
全ての税金を取り扱っているわけではない
この書類で口座振替になるのは、所得税と消費税のみです。
- 申告所得税 及び 復興特別所得税
- 消費税 及び 地方消費税(個人事業者)
例えば個人事業税は管轄が国ではなく各都道府県になるので、別途手続きが必要になります。また贈与税は口座振替に対応していません。何でも万能に口座振替できるようになる依頼書ではないことを覚えておいてください。
振替後に領収証書は送付されない
平成28年度税制改正により、平成29年1月以降は口座振替に伴う領収書の送付が取りやめになりました。理由は経費削減です。その代りに、次の方法で確認できるようになっています。
- e-Tax で申告した場合は「振替納税結果」のメニューから確認可能
- 税務署で口座振替がなされた証明書の交付請求手続が可能
詳しくは国税局のサイトをご確認ください。
提出期限はあるのか?
依頼書の提出はいつでも出来ます。ただし、本来現金で納税すべき期限(法定納期限)を超えて提出すると、対象は翌年以降になるので注意しなくてはいけません。例えば2018年度の場合は、次のようになります。
申告所得税 及び 復興特別所得税
区分 | 法定納期限 | 振替日 |
---|---|---|
予定納税第1期 | 2017年7月31日(月) | 2017年7月31日(月) |
予定納税第2期 | 2017年11月30日(木) | 2017年11月30日(木) |
確定申告 | 2018年3月15日(木) | 2018年4月20日(金) |
確定申告滞納 | 2018年5月31日(木) | 2018年5月31日(木) |
消費税 及び 地方消費税
区分 | 法定納期限 | 振替日 |
---|---|---|
確定申告(原則) | 2018年4月2日(月) | 2018年4月25日(水) |
法定納期限までに依頼書を提出して受理されると、振替日に引き落とされる仕組みです。振替日は、あくまでも事前に手続きした場合に処理される日付なので、勘違いして税金が未納にならないよう気をつけてください。
以上、個人事業主の所得税や消費税を口座振替にするための手続き方法の紹介でした。