【レビュー】Surface Pro 9 Microsoft SQ3 搭載 5G モデル。ビジネス用途での使い勝手はどうか?Intel 版との違いなど

更新日: 公開日:2023/01/13
【レビュー】Surface Pro 9 Microsoft SQ3 搭載 5G モデル。ビジネス用途での使い勝手はどうか?Intel 版との違いなど

マイクロソフト独自の Arm 系プロセッサ、Microsoft SQ を初めて搭載した Surface Pro X。マイナーアップデートの SQ2 を経て、2022年11月末発売 Surface Pro 9 with 5G モデル に最新の Microsoft SQ3 が搭載されました。

名前の通り 5G 通信に対応した SIM スロットを搭載し、企業向けモデルとして位置付けられています。

しばらく同モデルを試用してみたところ、用途によっては使いづらい部分もあり、利用者層が限られる印象を受けました。ここでは Microsoft SQ3 を搭載した Surface Pro 9 5G モデルがどのような端末なのか、Intel 版との違いなどを紹介しながらレビューしていきます。

目次

Microsoft SQ3 の特徴

Intel 版と何が違うのか

  • 消費電力が小さい
  • 発熱量が少ない
  • SIM・eSIM が使える
  • 一部 x64 (64bit) アプリが動かない
  • ラインナップが1種類のみ

身近なところだと、Arm 系プロセッサは Android スマートフォンに搭載されています。Intel や AMD のプロセッサと比べると、消費電力が少なくバッテリー消費量を抑えられるのが特徴です。

Windows 向けのアプリは動作するものの、Arm 系プロセッサに最適化されているわけではありません。エミュレーションを介しての動作になるため、一部のアプリは互換性の問題で使えないケースもあります。

64bit 版アプリ (x64) は、Windows 11 になってようやくエミュレーションが対応しました。

構成は選択できず、メモリ 8GB 容量 256GB、色がプラチナの1種類のみが用意されています。メモリ 16GB も、ストレージ 512GB も選べません。

Arm プロセッサ搭載の Surface が登場してから3年経っても、まだまだ Windows と Arm プロセッサの組み合わせは発展途上の段階です。

なぜ Arm プロセッサを搭載するのか

これまでの Intel や AMD の CPU で問題なければ、わざわざ新しい Arm アーキテクチャーを搭載しなくても良いのでは?と思うかもしれません。もちろん Intel や AMD を使っていても、SIM スロットを搭載できます。

ただ Arm 系プロセッサを搭載すれば、モデムと SoC を統合して少ないコストで実装できるだけでなく、別々に搭載するよりも消費電力を抑えられるメリットを得られます。また AI 的な処理を得意とするなど、これまでと違ったアプローチが出来る可能性も秘めています。

マイクロソフトとしては、Arm 版モデルを "スマートフォンのように常にネットワークにつながる端末" として、アピールしていきたいようです。目指しているのは、省エネで長時間駆動するモバイルパソコンといったところでしょうか。

Intel 版のレビューはこちら

Surface Pro 9

新型の Surface Pro 9 は、Surface Pro X のボディーがベースに作られています。中身の構造は大幅に進化して、修理のしやすさが向上しているのは特筆すべき改良点です。

SIM (eSIM) 通信が目的であれば、5G に対応した Surface Pro 9 は適しているかもしれません。ただ Arm アーキテクチャーの特性を理解していないなら、Intel 版の利用を推奨します。テザリング等で Wi-Fi 通信できれば、SIM にこだわる必要もありません。

ここでは Arm 版 5G モデルに特化して解説しています。Intel Core i シリーズを搭載した Surface Pro 9 のレビューをご覧になりたい方は、こちらの記事を参考にしてください。

Intel 版 Surface Pro 9 は僕が常用しているモデルです。機能だけでなく使用感なども、わかりやすく紹介しています。

Microsoft
CPU第12世代 Intel Core i5、Intel Core i7
メモリ8GB、16GB、32GB
ストレージ128GB、256GB、512GB、1TB
Microsoft
CPU第12世代 Intel Core i5、Intel Core i7
メモリ8GB、16GB (Microsoftストアのみ販売)
ストレージ256GB、512GB (Microsoftストアのみ販売)
Microsoft
CPU第12世代 Intel Core i5、Intel Core i7
メモリ8GB、16GB (Microsoftストアのみ販売)
ストレージ256GB、512GB (Microsoftストアのみ販売)
Microsoft
CPU第12世代 Intel Core i5、Intel Core i7
メモリ8GB、16GB (Microsoftストアのみ販売)
ストレージ256GB、512GB (Microsoftストアのみ販売)

Surface Pro 9 5G モデルの機能

Surface Pro 9 5G モデルのタイピングの様子

5G モデルだけが持つ特徴

  • Arm プロセッサ搭載
  • 省エネで発熱しずらくファンレスで静か
  • 5G 対応 (Sub6) の SIM スロット搭載
  • eSIM に対応
  • NPU の機能を持っている

前述の Microsoft SQ3 の特徴そのままですが、プロセッサの発熱量が少ないためパソコンはファンレスで駆動します。スマホにファンがついていないのと同じ原理です。

しかしファンがないから熱くならないわけではありません。継続的に負荷の高い処理をすると、相応に発熱します。実際にベンチマークを測定して負荷をかけた状態で触ってみたところ、かなり高温でした。(想像するより熱いかも)

SIM スロットは背面スタンドの裏に配置。右下の穴に SIM ピンを挿して蓋が外れます。SSD にも直接アクセスできるのは、Surface Pro X から継承された構造です。

Surface Pro 9 5G モデルの SIM スロット

SIM だけでなく、eSIM にも対応しています。5G 通信を行う手順は公式サイトに掲載。

最後の NPU については、このあと詳しく解説します。

Intel 版との共通する特徴

  • OS は Windows 11 Home
  • 本体サイズは A4 用紙とほぼ一緒
  • 中身は Windows パソコン
  • タブレットとしても使える
  • 13インチの画面はタッチ操作に対応
  • 画面の縦横比は3:2【使いやすい】
  • 専用のペン型デバイス「スリムペン」が使える
  • 旧型の Surface ペンも使える
  • ペンはキーボードに収納するだけで充電できる
  • キーボード・ペン型デバイスは別売り
  • Surface Pro 7 以前のキーボードは使えない
  • Office Home and Bussiness 2021 付属
  • 顔認証による生体認証が可能
  • USB-C は Thunderbold 4 に対応
  • リフレッシュレート 120Hz
  • SSD へ簡単にアクセスできる

Surface Pro シリーズは、パソコンでありながらもタブレットとしても使える端末であるのが最大の特徴です。またペン型デバイスと組み合わせて使う用途にも最適化されています。

Surface Pro 9 をノートとして使う

重量は本体のみで約 850g と軽量。キーボードを合わせても 1.18kg と携帯性に優れています。

2つある USB-C 端末は、PD 充電に対応し、外部モニターへの出力も可能 (オルタネイトモード) になっています。なお 5G モデルの充電用アダプターは 39W と、Intel 版の 65W よりも少ないパワーで充電できます。

PD 充電は、40W 以上の USB-C アダプターで対応可能です。

Surface Pro 9 は携帯用の端末として利用して、デスクワーク時は外部モニター接続して利用するのが最適な運用方法だと思います。

Surface Pro 9 にディスプレイをつないだ様子 給電される

他にも具体的な用法については、Intel 版 Surface Pro 9 のレビューで詳しく紹介しています。

NPU について簡単に解説

NPU (ニューラルプロセッシングユニット) とは、一言で伝えるなら AI 処理を得意とするユニットです。演算処理を行う CPU、グラフィック処理を行う GPU、そして AI 処理を行う NPU です。ニューラルネットワーク、つまり脳の神経細胞のようなネットワーク構造で処理を行う特徴があります。

例えばスマートフォンだと、背景ボケやナイトモードの撮影などでリアルタイム処理が必要な機能において NPU が活躍しています。

シーケンシャル (順番で1つ1つ) で処理する CPU と異なり、複数の処理を同時並行に処理したり、学習結果を基に推測する処理 (AI 処理) を高速に実行するのを得意としています。例に挙げたような処理では、CPU だと高負荷がかかります。一方 NPU だと効率よく処理して消費電力が少なく抑えられます。

現状はリアルタイム処理を得意とする機能だと理解しておけば OK です

NPU を使った新機能 Windows Studio Effects

Surface Pro 9 5G モデルのアンテナ

(5G モデルはボディー側面にアンテナが張り巡らされている)

NPU を搭載した Surface Pro 9 5G モデルは何ができるのか。今のところ用意されているのは、カメラの撮影に特化した4つの機能です。

  1. 背景の効果 (背景のぼかし)
  2. 自動フレーム
  3. アイコンタクト
  4. マイク音声のフォーカス

背景ぼかしや、ノイズを除去して人の声にフォーカスする機能は、Zoom や Teams などでも標準で実装されている機能です。効果的には同じですが、パソコンへの負荷が少なく処理できるのが特徴です。

自動フレームとは、映っている人物を認識して、その人が動いても画面の中央にくるようにカメラが動く機能です。実際にカメラが動くわけでなはく、ズーム状態にして切り取る位置を自動で動かすような機能です。この機能、たまに画面酔いしそうになるので、個人的には好きではありません。

アイコンタクトとは、カメラに写る映像がカメラ目線でない場合に、自動的にカメラ目線に補正してくれる機能です。画面に集中していてもカメラ目線になってくれるため、状況に応じて役立つ機能だと思います。

メーカーによっては Web カメラ付属のアプリで対応している機能もあるため、どれも真新しい処理ではありません。ソフトで処理するか、ハードで処理をするのか。利用者にとってはあまり意識する機会のない部分です。

結果的に NPU 処理だと消費電力が少なく済むものの、アピールポイントとしては弱いですね。

ベンチマークを測定

CINEBENCH R23

CINEBENCH は x64 系アプリであり、Arm プロセッサの能力を測定するものではないため、仮想 CPU としてエミュレートした数値になっています。比較対象として Intel 版に搭載している第12世代 Core i5 のスコアも掲載しておきます。

Surface Pro 9 Cinebench R23 Arm Microsoft SQ3 スコアSurface Pro 9 Cinebench R23 Intel Core i5-1235U スコア

CPUArm 版 Surace Pro 9
Microsoft SQ3
Intel 版 Surace Pro 9
Core i5-1235U
マルチコア3,480 pts7,966 pts
シングルコア493 pts1,590 pts

結果はダブルスコアでありますが、実際そこまで能力が低いわけではありません。Windows 64bit アプリをエミュレートした上でのスコアなので参考程度に。

SQ1 や SQ2 からどれくらい進化した?

Microsoft SQ2 から SQ3 へのアップデートにおいて、L2 キャッシュ、L3 キャッシュが大幅に増えました。体感的に「少し速くなったかな?」くらいの印象です。ただ旧モデルが手元にないので、記憶は定かではありません。

CPUSQ1SQ2SQ3
コア数8コア
動作周波数3.00 GHz3.15 GHz3.00 GHz
L1 キャッシュ768 KB
L2 キャッシュ2.5 MB6.0 MB
L3 キャッシュ4.0 MB8.0 MB

今はまだマイナーアップデートの段階。実用性が上がっている点からも、あともう少しといったところでしょうか。どこかで大きく性能が向上してくれるのを期待したいところです。

Surface Pro 9 5G モデルのメリット・デメリット

メリット・良いところ

  • 5G 通信に対応
  • バッテリー駆動時間が長い
  • Office 2021 を標準で使える
  • Web 会議に特化した AI 処理を搭載

スマホのように常時インターネットにつないで使えるモバイルパソコンとしては、Arm プロセッサ搭載の Surface Pro 9 5G モデルは評価できる端末です。

今でこそオンライン会議が当たり前になった世の中であるため、NPU によるリアルタイム処理 Microsoft Studio Effects 機能も役に立つ場面が多く、企業向け端末として位置付けている方向性は悪くないと思います。

Office 2021 は各種アプリきちんと動作します。ライセンスキーは入力する必要がなく、オンラインで Microsoft アカウントと紐づけるだけで利用できます。

バッテリー駆動は公称値で 19時間です。Intel 版の 15.5 時間よりも 3.5 時間も長く、Arm プロセッサがいかに省エネかがわかります。ただ実際にはこんなに長く使い続けられるわけでなく、10~12時間くらいが目安になると思います。それでも Intel 版のモデルよりも駆動時間が長いのは間違いありません。

デメリット・要改善ポイント

  • 一部の 64bit アプリが動作しない
  • 構成のラインナップが少ない
  • サーマルスロットリングが起こる

Adobe 系のソフトは対応していません。また Chrome ブラウザは、32bit 版だと問題なく動いて、64bit 版だと動作が重くなって正常に動きません。x64 (64bit) アプリが使えるようになったとは言え、安心して使えるレベルには達しておらず。32bit 版アプリであれば問題はなさそうなので、利用者は限られてきます。

また選べる構成は1つだけ。メモリ 8GB、ストレージ 256GB のプラチナのみ。SSD が交換できそうなので、知識があればストレージ容量は増やせそうです。メモリは交換できません。そもそも Arm プロセッサの端末を使うユーザーが少なく、過去存在した 16GB モデルの需要がなかったのかもしれません。

発熱しにくいからファンレス構造になっているとは言え、負荷テストを行うとサーマルスロットリングが発生しました。ファンのある Intel 版のマシンでは起こらなかったことから、確実にファンレスが影響しています。

Microsoft SQ3 でサーマルスロットリングが発生

ただこの 5G 版 Surface Pro 9 を使う上で、高負荷な状態で連続的に使う場面があるのかと考えると、それはそれで現実的ではないと思うわけで。普段使いであればサーマルスロットリングはほぼ発生しないし、ファンレスで静かに使えるメリットのほうが大きいような気がします。

5G 版 Surface Pro 9 を使った感想

はっきり言ってしまうと、使いやすい端末ではないです。SIM を使わなくてもテザリング + Wi-Fi でネットワーク環境は構築できます。充電できない環境で使い続ける機会がなければ、バッテリー駆動時間が長い恩恵もあまり受けられません。

USB-C での PD 充電に対応しているおかげで、小型の USB-C アダプターを持ち運んでいれば手軽に充電できます。僕が使っているのは CIO の 65W アダプターです。ケーブルと合わせても重量は 130g と軽くおすすめです。

Surface Pro 9 と一緒に持ち歩いてる CIO のアダプター

CIO
カラーホワイト / ブラック
重さ約 100g

そもそも全ての 64bit アプリが使えない時点で、本格運用するのは難しい端末です。

NPU が機能する Windows Studio Effects も、Zoom や Teams などの各種ソフト側でどうにかなっている印象が強いです。目線を補正するアイコンタクトは、他の参加者が同じ機能を使っていな限り、1人だけ「いつもカメラ目線の人」になってしまうため不自然にも思えます。

ただ Surface Pro 9 自体はとても使いやすい端末です。僕はパソコンとしてもタブレットとしても使っているため、日常的に欠かせない端末になっています。携帯性に優れている点も、お気に入りのポイントです。

おすすめできる端末か?

どうしても SIM 運用で使いたい特別な需要がない限りは、わざわざ Arm 版を選ぶメリットは少ないです。レビューを見ておすすめされて買う端末ではなく、使ってみたい人が購入する特殊な端末だと結論づけるのが正しいと思います。

万人向けの端末でない以上、おすすめできる端末と断言するのは難しいです。現時点で Arm 搭載パソコンの評価が「いまいち」であっても、将来発展していく可能性はあります。ただ今のうちに Arm 版 Windows に触れてみたい方には、間違いなく刺さる端末だと思います。

モバイルパソコンとして Surface Pro 9 を位置付ける点は納得できます。携帯性にも優れているし、パソコンとしてだけでなくタブレットとしても使える。デフォルトでタッチ操作できるのはとても便利です。

なお公式の Microsoft ストアで購入すれば、開封済みでも60日間返品無料のサービスが用意されています。使ってみたいけど不安材料が大きく買うのを迷っているなら、ぜひ公式ストアの利用をおすすめしたいです。

使ってみてイメージと違ったら返品できる。これは公式でないと提供できないサービスです。

そしてもし Wi-Fi で対応できる環境でビジネスユースでのパソコンを求めているなら、Intel 版 Surface Pro 9 をおすすめします。またラップトップ型の端末も実機レビューしていますので、気になる端末があればぜひ参考にしてください。

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NJ

元システムエンジニア。個人事業主として独立して Web サイト運営、ポップデザインや動画制作など、パソコンでモノづくりしています。

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