緊張してダーツが入らない?クワイエットアイで集中力とパフォーマンスの向上を図る

ビッグトーナメントと言われる大きな大会やリーグ戦など、いわゆる平場ではない特別な状況下において、緊張してダーツがいつものように飛ばない経験は誰しもが持っていると思います。
大事な場面で緊張しないようためにはどうすれば良いのか?と疑問を呈すると、場数を踏んで慣れるしかないと、ごもっともな答えが返ってきます。確かにその通りですが、精神論的な話すぎて、もう少し具体的な答えを求めている人が多いのではないでしょうか。
なぜ緊張するとダーツが入らなくなる?
まず、ダーツで良いパフォーマンスを出すには、程好い緊張が必要になります。そして度を過ぎた緊張に達すると、一気に発揮できる能力が低下します。
これは心理学のヤーキーズ・ドットソンの法則で示されいる理論で、能力を引き出すにはある程度のストレス負荷が必要とされています。
心地よいストレスがあることで、脳内にアドレナリンが分泌され覚醒が始まります。この結果、集中力が高まる状況を作れるのです。一方で緊張に加え「この1本で決めなきゃいけない!」といった自分への圧力が強くなりすぎると、無意識のうちに注意力が散漫になってしまいます。
ストレス負荷が能力を向上させる一例
ストレスがパフォーマンスに影響する具体的な例を示してみましょう。
仕事でも学校の課題でも良いですが、締切が近付くと急に集中して作業に没頭することがありませんか?そして無事に終わった後で、このペースで最初から出来たら、こんなに苦労することは無かったのにと思うこと、ありますよね。
逆に、締切に間に合わない状況が見え隠れした瞬間、期限ギリギリまで頑張って集中するどころか、しどろもどろになって思いのほか進捗が進まない状態になることもあるでしょう。
まさにこれがヤーキーズ・ドットソンの法則の理論で、締切に間に合わないかもしれないと考えることが大きなストレス要因となり、集中力を阻害してしまうのです。
過度なストレスは能力を低下させる
緊張によるストレスが、覚醒の域を超えてただのプレッシャーと化し、最終的に集中力を途切れさせる要因となります。つまり
緊張する → 集中力がなくなる → ダーツが入らない
この構図が成立するのです。
そして集中力の欠落だけでなく、肉体的にも筋肉のこわばりが生じ、結果的に同じ動きをしているつもりでも普段より動作が小さくなってしまうため、同じように投げているつもりなのに、同じ動きをしていると自身で実感できないのです。
緊張するとダーツが入らなくなる理由、それは集中力がコントロールできなくなるからと結論付けてしまえば納得するのではないでしょうか。
緊張との共存することが重要
緊張してダーツが入らない状況を打破するためには、緊張がなくなれば解決するのでしょうか?
答えはノーです。
普段から頻繁に緊張する人には信じられないかもしれませんが、プロのトッププレイヤー並にダーツが上手い人になると、真逆な状態に陥ることがあります。つまり、緊張していないのにダーツが入らないということです。
そしてこの状況におけるダーツが入らない原因は「緊張していないから」なのです。
ストレスを調整する方法はあるのか?
前述のストレスとパフォーマンスの関係をグラフに表すと、次のような逆U字の曲線を描きます。
よほどメンタルが強い人でない限り、緊張の度合いをコントロールするのは不可能です。じゃあ、どうすれば丁度良い緊張状態を作れるのか?
それを解決する方法の1つが、集中力を高めることです。
ここでようやくタイトルにある「クワイエットアイ」が登場します。
クワイエットアイが生む集中力
クワイエットアイとは、狙いを定めてパフォーマンスするスポーツで取り入れられる目で見ることの意識改革で、集中力を高める簡易的な方法としてスポーツ心理学で注目されています。
要するに競技時の視線の運び方を意識することで、結果としてパフォーマンス向上につながるのです。
目が泳いでいるのは緊張の証拠
過度な緊張状態になると大きなストレスが生まれ、自分の身が危険な状態にあると脳が判断します。すると身の周りの危険を回避するために、無意識にキョロキョロと目が泳いでしまいます。
この視点が定まらない状態を回避するために行うのがクワイエットアイです。ある特定の1点を集中して見ること。たったこれだけです。
集中から緊張を操作する
1点を見つめ続けることで、過度な緊張は和らぎ、集中することで足りない緊張が補われます。その結果、良いパフォーマンスが出せる状態にメンタルが仕上がるのです。
単に集中力を高めると言っても意識するのは難しいですが、1点を見つめるのは意識的に練習すれば慣れます。
そして見つめる1点は、狙うターゲットです。そんなのいつも狙ってるよ!と言われそうですが、ブル1つとっても全体を捉えるのか、インブルを点として捉えるのかでも意識は異なります。
集中する範囲はより小さく!
ダーツをする上でターゲットを大きく捉えるのは大切なことです。実際に狙うターゲットは自分が思っているより大きいと意識させることで、余計な緊張を軽減させるのに役立つ考え方です。
しかし大きく捉えたターゲットの中で視点があちこち泳いでしまっては、クワイエットアイの効果は発揮されません。あくまでも1点に集中することが大切なのです。極端な話、ソフトダーツであればボードの穴を見つめるくらいの気持ちが必要です。
コーク時に先に投げた相手がアウターブルに刺さった場合、否が応でもインブルに意識が集中します。しかもダーツが一本刺さっていると、それが目安となるので、より小さい範囲で意識することができます。ハードの場合でも、1本目が20トリプルに入ったら、2本目はスタッキングさせるために1本目のダーツを狙いますよね。
視点を動かさず1点に集中するって難しいように思えますが、意外と試合の中で視線の先を点として捉えている機会はたくさんあるのです。
見ること以外に意識を集中させない
クワイエットアイで意識するのは目で1点を捉えること。これだけに注力してください。
一番やってはいけないこと、それはフォームを意識することです。緊張すると体がこわばりフォームが崩れてしまうのはよくある話です。だからといって、フォーム修正を試合の最中に行うのは以ての外。緊張で縮こまった筋肉が原因で腕が伸びていないのに、無理にフォロースルーの手を伸ばすように意識するのも同様です。これらの意識は余計に体をこわばらせ、度が過ぎるとイップスの原因にもなってしまいます。
かく言う僕も、緊張時にフォームを意識し始めたことをきっかけに、2年近くイップスで悩んでいた時期がありました。その時は集中する矛先がターゲットではなく、手を出すことに重きを置いていたのは間違いありません。当時は、テイクバックの位置から、ずっと誰かに手首を押さえつけられているような感覚でした。
体の緊張がほぐれれば、自ずと練習時のいつものフォームに戻ってくれます。大会時には無理に崩れたフォームを直すのではなく、崩れた原因となる緊張を取り除くのが最優先事項と考えてください。
クワイエットアイによるパフォーマンス向上に関する論文
鹿児島にある国立大学「鹿屋体育大学」の紀要論文で、クワイエットアイに関するものが掲載されています。バスケットボールのフリースローにおいて、素人にクワイエットアイのトレーニングをして、どれだけシュート力が向上するかを研究した報告となっています。
ここで中身を説明してしまうと超長文になってしまうので、興味のある方は読んでみてください。論文なので堅苦しい文章ですが、少なからずダーツのスローで意識すべきヒントが見つかるのではないかと思います。
リンク先の下に PDF が添付されているので、そちらから閲覧できるようになっています。
まとめ
- 緊張してダーツが入らないのは集中力の低下が原因
- 緊張していないのにダーツが入らないのも集中力低下が原因
- 能力を発揮するには程好い緊張が必要
- 集中する意識から緊張のバランスを調整する
- とにかく1点を意識することが大事
- 過度な緊張状態でフォームは修正しない
クワイエットアイはダーツのフォームに関する修正点ではないので、誰もが簡単に試すことができる方法です。
必ずしも結果に結びつくとは言えませんが、スポーツ心理学に基づいたパフォーマンス向上につながる手法なので、いつも大会で緊張して上がってしまう人は一度試してみてはいかがでしょうか。
以上、集中力を高めて緊張を和らげ、パフォーマンスにも効果を発揮するクワイエットアイの紹介でした。